レイサーチ・ジャパン/放射線治療計画ソフトウェアの進化にのぞむ

レイサーチ・ジャパン/放射線治療計画ソフトウェアの進化にのぞむ

https://www.raysearchlabs.jp/

 スウェーデンに本社を置くRaySearch Laboratories AB publ(レイサーチ・ラボラトリーズABパブリ)は、ガンの放射線治療のソフトウェアを開発する専門企業。創業者でありCEOのアンダース・ヨハン・レフ氏が2009年に創業以来、採用施設を増やし、急速に成長してきた。レイサーチ・ジャパンはその日本法人で2019年に設立。今回のブースでは治療計画プログラム「RayStation」と情報システム「RayCare」をメインに紹介し、来場者の足を止めさせていた。

●治療計画プログラム
「RayStation(レイステーション)」

RayStation(レイステーション)は、レイサーチ・ジャパンの主力製品であり、また次世代型治療計画システムである。放射線治療においては、どこに、どの方向から、どの程度のエネルギーを照射すべきかを素早く計算し、最適な治療計画を作り上げることが治療結果にダイレクトに結びつくことは周知のこと。また、それは患者によっても違い、同患者でもその日の体調などによって違ってくることから、治療計画プログラムには、極めて高い技術と操作性が重要であるのは自明だ。同社は、それに対応すべくGPUを利用した超高速演算機能、多くのユーザーからの要望を取り入れたGUI(Graphical User Interface)を備えると共に、治療のプロセスと質の改善をサポートする複数の特長を有している。それに対応するRayStationの特長を以下にあげると、①MCO(Multi₋Criteria Optimization):リアルタイムで臨床的なトレードオフのバランスをチェックし、計画プロセスの簡素化と計画の品質向上が可能。②Adaptive Therapy:放射線治療の動的変化を処理する設計によりAdaptive Therapyの高品質なフレームワークを提供。③Reduce OAR Dose:リスク臓器での線量低減を実施する治療計画を安定提供。④Robustness:患者の位置合わせの誤差や密度変換のエラー、患者の解剖学的構造の変化に対応した高品質な治療計画の作成実施。⑤Fallback Planning:1つの治療装置が故障しても、代替治療装置での治療継続が可能。⑥IMRT計画の自動化:乳房IMRT計画の自動化など、多くの自動化・省力化機能を搭載。
なお、治療機器メーカーでも放射線治療計画ソフトは開発しているが、自社の機器を想定して設計しているのは当然であるのに対し、同社はハードウェア、つまり治療装置は生産せ ずに、ソフトウェアのみを開発・販売する専門企業である。会場で説明してくれた同社マーケティング・セールス統括の稲生英里子氏は、そのことについてつぎのように語ってくれた。「RayStationは、世界のさまざまなメーカーの、さまざまな世代の放射線治療装置での使用を想定して、高速かつ効率的に治療計画を作成できるのが特徴となっており、やはり餅は餅屋の強みがあります。その安定した互換性、適合性がRayStationの評価を高めているもうひとつの大きな要因といってよいです」
なお、RayStationは一般的な放射線治療だけでなく、陽子線治療、重粒子線治療およびBNCT(中性子捕捉療法)にも対応している。
RayStationは、現在、グローバルで914施設に導入されており、日本においては2014年に東京大学病院に日本で初めて導入されて以降、着実に導入施設を増やし、現在206カ所を超えたという。

●放射線治療情報システム
「RayCare(レイケア)」〈新製品〉  
RayCareは、がん治療を支援する包括的情報システムである。RayStationの治療計画機能とシームレスに連携し、患者の各種情報や治療スケジュールを調整し、院内のワークフローの効率を上げることができる。
その特長の一部を以下にあげる。RayStationとは完全に統合されており、RayStationの全治療計画ツールへのシームレスなアクセスを提供していることがあげられる。また、治療のスケジュールとリソースを完全に制御できるように設計されている他、RayCare患者カルテには、臨床および管理上の患者情報を管理するための各種ツールが含まれており、さまざまなワークスペースが、紹介から治療、フォローアップまでの患者の治療進捗状況を文書化し、その情報にアクセスして施設特有の分析を実施する。
前出の稲生氏によれば「欧州では放射線治療だけではなく、化学療法ともつなげて広がりを見せていますが、日本では昨年認可をいただいたばかりで、これからというところです。RayStationと自動的に連携できることで、ケアレスミスは少なくなりますし、スピードも速くなり、がん治療の質の向上に貢献するはずです」


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