富士通/クラウド型のプラットフォーム「Healthy Living Platform」を販売開始

 富士通は、医療分野における診療データや健康データの利活用に向けた新たなクラウド型のプラットフォーム「Healthy Living Platform(ヘルシーリビングプラットフォーム)」を開発し、2023年3月28日より、日本国内において、医療機関や製薬企業向けに販売開始する。
 本プラットフォームは、医療機関の電子カルテシステムに蓄積された診療データを次世代医療情報標準規格であるHL7 FHIR(注1)に変換して標準化した上で集約するとともに、患者個人が持つバイタルデータや歩数、消費カロリーなどの健康データを本人同意のもと保存できる。集約保存されたデータは安全かつ容易に活用できるように特定の個人を識別できないデータに変換し、医療機関は患者一人ひとりの個別化医療の促進、製薬企業は新薬開発の有効性や安全性の分析に利用でき、新たな価値の創出につなげることが可能になる。さらに富士通はこの仕組みを活かし、患者自身が診療データをスマートフォンで閲覧できるデータポータビリティ(注2)サービスや、医療機関がプラットフォーム上で共有した診療データを高度に分析できるサービスなどを展開していく。

「Healthy Living Platform」の特長
1、次世代医療情報標準規格のHL7 FHIRに自動変換
各医療機関が持つ電子カルテシステムの診療データを本プラットフォームに集約する際、次世代医療情報標準規格HL7 FHIRの日本国内における実装ガイドであるJP Core(FHIR JP Core 実装ガイドV1.1.1)(注3)に準拠した形式へ自動変換した上でクラウド環境に保存。医療機関ごとに異なるデータ規格を統一することで、データ活用を容易にする。

2、健康に関わる幅広いデータを集約可能
電子カルテシステムの診療データだけでなく、個人が持つバイタルデータや歩数、消費カロリーなどもデータポータビリティサービスにより集約できるほか、今後、健診データなども取り込めるようにしていく予定。幅広いデータを集約することで、医療機関での診療業務および臨床研究や、製薬企業での新薬開発で、より高度な分析や活用が可能になる。

3、安心安全なデータ活用を支える高いセキュリティ性
本プラットフォームにおけるセキュリティ対策は、厚生労働省が定める「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」ほか、各省庁が定める各種ガイドライン(注4)に準拠し、Microsoft のクラウドコンピューティングプラットフォーム「Microsoft Azure」を利用して安心安全なクラウド環境で構築する。

想定される「Healthy Living Platform」の活用シーン
医療機関における活用
・複数の医療機関の診療データや患者の健康データなどを参照し、患者の病歴や日々の体調、アレルギー、体質など、詳細な健康状態やペイシェントジャーニー(注5)全体を把握することで、適した薬剤の処方、治療方法の選択といった個別化医療を促進
・データ規格の標準化によりデータの収集や加工、クレンジングにかかる時間を短縮できるため、臨床研究や論文作成を効率化

製薬企業における活用
・治験患者から得ている臨床検査データだけでなく、実診療の匿名加工されたデータによって、医薬品の効果や副作用といった有効性および安全性の検証をより詳細かつ効率的に行うことができ、新薬開発の期間短縮や成功率向上および承認薬の適用拡大を推進

注1 HL7 FHIR:
HL7(Health Level Seven) Fast Healthcare Interoperability Resourceの略であり、HL7協会によって作成された次世代標準規格。HL7協会(Health Level Seven Inc)は、医療情報標準規格の開発やその普及促進を目的とする団体。医療情報標準規格は、保健医療分野の適切な情報化に資することを目的に制定された規格。

注2 データポータビリティ:
政府、企業、医療機関などで個別に管理される情報を自分で管理し、自由に持ち運ぶことができるようにすること、その仕組み。

注3 HL7 FHIRの日本国内における実装ガイドであるJP Core(FHIR JP Core 実装ガイドV1.1.1):
HL7 FHIRのうち日本HL7協会(HL7協会 日本支部)公認であり、日本医療情報学会(JAMI) NeXEHRS課題研究会「HL7 FHIR 日本実装検討WG」で作成されたHL7 FHIR標準を元に日本国内で患者データにアクセスするための最小限の適合性要件を定めた日本国内における実装ガイドであるFHIR JP Core 実装ガイドV1.1.1を指す。

注4 各省庁が定める各種ガイドライン:
厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」および経済産業省・総務省「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」。

注5 ペイシェントジャーニー:
患者が病気を発症してから医療機関での受診や服薬など治療を受けている期間の患者の行動や感情などの過程。

問い合わせ先=富士通コンタクトライン(総合窓口)
TEL:0120-933-200


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