第45回医療情報学連合大会/現地に約3000名の参加者が集い、“医療情報新時代”を語り合う(25.12.18)
第45回医療情報学連合大会(第25回日本医療情報学会学術大会)が2025年11月12~15日、アクリエ姫路(兵庫・姫路市)で開催された。大会長は山下芳範氏(福井大学医学部附属病院)。「医療DXがもたらす医療情報新時代」をテーマに、昨年に続けて同大会も、現地開催に加えオンライン配信も行うハイブリッド方式での開催となった。
以下に、小誌が注目した講演等を紹介する。14日には、ランチョンセミナー12「ミドルウェアを活用した働き方改革の推進~コスト算定から医療DXまで(共催:インターシステムズジャパン)」では、座長に同大会実行委員長でもある竹村匡正氏(兵庫県立大)を迎え、土井俊祐氏(千葉大学医学部附属病院 病院長企画室/企画情報部)が講演した。同講演については、「月刊新医療2月号」にて講演要旨の掲載を予定している。
15日には、大会長講演が行われ、山下氏が「医療DXにおける医療情報の役割~これまで、これから」を演題に講演を行った。同氏は、原子力工学から医療情報学への転身、そして自身が1989年のMEDINFO89(第6回世界医療情報学会議)で発表したEMRの開発の話から始め、医療情報システムの技術的発展について概説。次いでシステム環境の変遷、現在の病院情報システムの技術的動向と課題について説明し、今後の展望としてAI技術や量子コンピューティングなどの最新技術について、将来的な医療現場での可能性を論じた。
また、産官学連携企画「医療等情報の二次利用の現状と将来」では、座長に横井英人氏(香川大)、武田理宏氏(阪大、オーガナイザーの小笠原克彦氏に代わり登壇)を迎え、4人の演者が以下の演題で講演した。
▷「医療等情報の二次利用に関する政府の取組」糸谷肇祐氏(厚生労働省 医政局)▷「製薬業界における医療情報データベースの2次利用の現状と将来展望」弘 新太郎氏(日本製薬工業協会/ファイザーR&D)▷「二次利用における医療情報システム開発の現状と課題」塩川康成氏(日本医療情報学会)▷「医療等情報の利活用に求められるもの~臨床現場・医学研究の視点から」澤 智博氏(帝京大学医療情報システム研究センター)
塩川氏の講演を紹介すると、「日本の『世界デジタル競争力ランキング』は2025年時点で世界30位という低いランキングに位置している。
製造業では優秀な実績を持つが、情報分野での遅れが顕著であり、データの2次利用を実現するためには、医療情報システムも従来のファンクション型実装からデータ駆動型への転換が必要である」と訴え、欧米におけるデータの2次利用の現況を紹介。国内の対応課題として、HL7 FHIR等の国際標準の採用や、若手人材の育成と国際舞台での活躍促進、永続性のあるガバナンス体制とリーダシップが必要であると説いた。
閉会式では、大会長の山下氏が同大会での参加登録者数が3800名を超えたこと、うち現地参加者も2900名を上回ったことをを報告。また、昨年を上回る規模の企業展示の実施により、最新の情報機器やシステムが紹介されていたことにも触れ、関係者への謝辞を述べた。
次いで、同大会で新しく創設された、実務報告に関する発表に与えられるYoung Practitioner Award(YPA)に伊藤敬太氏(富田浜病院)、また、学術的発表に与えられるYoung Investigator Award(YIA)に福山啓太氏(京都大学医学部附属病院)が選ばれ、同学会理事長の横井氏から賞状と副賞が授与された。
次回の第46回医療情報学連合大会(第27回日本医療情報学会学術大会)は、2026年11月12日~15日の4日間、渡邊 直氏(医療情報システム開発センター)を大会長とし、札幌コンベンションセンター(札幌市白石区)で開催の予定。
