超高精細CT研究会/臨床における有用性や新技術の効果について報告

 第2回超高精細CT研究会(主催:超高精細CT研究会、共催:キヤノンメディカルシステムズ)が、12月22日、国立がん研究センター・新研究棟1F大会議室(東京・中央区)にて行われた。
同会は、キヤノンメディカルシステムズの超高精細CT「Aquilion Precision」の技術・撮影・診断研究を通じて、CT撮影に関わる技術者の情報共有や知識の向上と最新知識の普及を目的として発足し、2017年12月に第1回目を開催。今回は「Use up U-HRCT」をテーマとして、一般演題の発表および技術講演・特別講演を行った。
 
開会に先立ち、同社の津嶋 総氏(本社CT営業部営業技術担当)が情報提供として「RSNA2018報告」をテーマに、同社の最新の活動や技術開発への取り組みなどについて解説。続いて同会代表世話人の石原敏裕氏(国立がん研究センター中央病院)が開会の挨拶を述べた。

2部構成の一般演題のうち、演題1では次の4発表が行われた。
▽「胸部ルーチン画像における超高精細CTと従来CTとの比較」伊波智子氏(琉球大病院)▽「超高精細CTを用いたCT Colonographyの病変描出能に関する検討」土井裕次郎氏(藤田医科大病院)▽「超高精細CTにおける消化管微細画像診断の可能性」鈴木雅裕氏(大原綜合病院)▽「超高精細CTにおけるトリミング画像の画質評価」宮崎絋樹氏(国立がん研究センター中央病院)
休憩を挟んで開催された演題2では、次の4発表が行われた。
▽「超高精細CTの耳科領域における撮影経験」吉岡哲志氏(藤田医科大病院)▽「超高精細CTにおける心臓検査の画質評価」千葉工弥氏(岩手医科大病院)▽超高精細CTによる深下腹壁穿通枝動脈CT-angiographyの有用性」井出紗也加氏(静岡県立静岡がんセンター)▽「超高精細CTを用いた頭部3D-CTAにおける穿通枝描出のための再構成法の検討」清水裕太氏(杏林大病院)

講演の部では、技術講演として辻岡勝美氏(藤田医科大)が「ファントム実験でわかった超高精細CTの臨床性能」について述べた。
同氏は測定時のファントムの限界や測定画像と臨床画像には本質的な乖離があるかもしれないという疑問から、「スライス厚が薄くなった超高精細CTにおいては、測定の従来の性能評価法では正しい性能評価ができない可能性があり、注意が必要」と指摘し、臨床を想定したファントムを使用しての評価を行った。その一環として、らせん穴あきファントムを制作し、超高精細CTのスライス厚測定やアイソトロピック性能の評価を実施。「超高精細CTは圧倒的な空間分解能を持つがゆえ、従来の物理評価ではその診断能に対応できているかは不明。物理評価を否定はしないが、臨床性能を評価するためのファントムでアイソトロピック性能などを評価することは、最近のパラメータ設定に役立つのではないかと考える」と結んだ。

特別講演は、最初に山城恒雄氏(琉球大病院)が登壇し、「超高精細CTの臨床使用:1年4ヵ月の経験から(頭頸部・胸部)」を演題に講演。同氏はAquilion Precisionを「空間分解能を30年ぶりに劇的に進化させたCT」と定義づけた上で、中内耳CTや頸部アンギオCT、胸部CTなどの使用経験から、「超高精細CTはルーチンの5ミリスライスにおいても画像がきれいに映るため、ルーチンでも十分に実用的に使える」と報告。今後の展開として、「胸部CTにおいて、新たな画像診断が期待できるだろう」と語った。

特別講演2では、曽我茂義氏(防衛医科大)が「Aquilion Precisionが腹部画像診断にもたらす効果」と題して講演を行った。
講演では胆管がん・膵がんなどの症例を報告。同CTでは正常神経叢まで確認できることを特筆すべきポイントとして挙げ、「超高精細CTにおいては、正常神経叢の新しい診断基準が必要になってくるかもしれない」と語った。
また、同大では腹部診断に同CTのディープラーニングを用いた画像再構成技術「AiCE」を用いており、同氏は同技術によるノイズ除去の効果を高く評価。「さらに、AIDR-3DやFIRSTと比べて、画像に違和感がないことが、AiCEの評価ポイントとして挙げられる」と述べた。


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