第43回医療情報学連合大会レポート(2023.12.15)

■テーマは「医療情報の安全な流通と活用」―時代を反映した講演が人気博す

 第43回医療情報学連合大会(第24回日本医療情報学会学術大会)が2023年11月22~25日、神戸ファッションマート(神戸市東灘区)で開催された。大会長は松村泰志氏(大阪医療センター)。同大会は、現地開催に加えオンライン配信を含むハイブリッド方式開催となった。
 23日に行われた開会式では、大会長の松村氏が挨拶。「Web参加も含めると3200名以上が参加登録され、主催者側として大変嬉しい。今大会のテーマは『医療情報の安全な流通と活用』とした。〝安全な”とは情報セキュリティ、〝流通”とはEHRやPHR、〝活用”とはリアルワールドデータを意味しているが、このテーマは医療情報を扱う私たちだけでなく、国家的な関心事になっている」と大会テーマの重要性を説明した後、大会の主要講演内容等を紹介した。
 開会式後には、同学会の第6回学術論文賞の授賞式が行われた。最優秀学術論文賞に選ばれた菊池正隆氏(東大大学院)、学術論文賞に選ばれた今倉 暁氏(筑波大)と山下貴範氏(九大病院)が登壇し、医療情報学会理事長の小笠原克彦氏(北大)から賞状と副賞が授与された。
23日に行われた永井良三氏(自治医大)による特別講演「医療情報による知識構築と社会変革:第三期SIPへの期待」や、大会企画1「生成AIの医療への応用」など、関心が高いテーマの講演には多くの来場者が会場に詰め掛けた。
 また、ランチョンセミナーランチョンセミナー 3「すべてのデータを利用する―医療情報の利活用のためのアーキテクチャと連携基盤(共催:インターシステムズジャパン)」では、座長に小誌で連載中の山野辺裕二氏(福岡輝栄会病院)を迎え、山田英雄氏(藤田学園)が「藤田医科大学におけるデータ2次利用連携基盤について」と題した講演を行った。

■VPN装置のセキュリティ対策を議論

 医用画像情報専門技師共同認定育成機構と日本放射線技術学会の共同企画5「医用画像部門におけるセキュリティ対策」では、オーガナイザー兼座長に坂本 博氏(東北大)、座長に木村通男氏(川崎医療福祉大)を迎え、3名の演者が講演を行った。
 最初に、原瀬正敏氏(豊橋市民病院)が「医療機器導入におけるセキュリティ対策」を演題に講演。現在、放射線部門のモダリティに対して行われているリモートメンテナンスにおいて、実際に豊橋市民病院で実施しているVPN装置へのセキュリティ対策を紹介。医療機器に対するサイバーリスクマネジメントの重要性を強調した。次に、谷 祐児氏(旭川医大)が「医療機器のリモート保守における課題と対策」を演題に講演し、VPN装置への過信を戒めるとともに、リモートメンテナンス接続時の課題を取り上げ、同接続を管理する上で「接続方法や形態、作業記録や接続機器の安全対策状況を確認し、放射線部門だけで判断するのではなく、医療安全管理者や上流のシステムを管理する医療情報部門のスタッフと相談しながら対策を立てるべき」と述べた。
 最後に、坂野隆明氏(みやぎ県南中核病院)が「サイバーインシデントを想定したBCP(IT-BCP)策定の取り組みについて」を演題に講演。2023年、医療法第25条第1項及び第3項の規定に、サイバーセキュリティ対策への取り組み状況の確認が追加されたことを説明し、医療機関が優先的に取り組むべき事項を解説。その中で取り上げられているサイバー攻撃を想定した事業継続計画(BCP)の策定については、リスクマネジメント視点・危機管理視点から、「従来行われてきた自然災害を想定したBCP対策に比べ、サイバー攻撃対策では、その予見性が困難であることが特徴だ。その対策として、講義やセミナー形式によるインプットと、事例やシミュレーション形式でのアウトプットをセットにしての訓練をする必要がある」と、訓練の企画・実施の重要性を説いた。
 次回の第44回医療情報学連合大会(第25回日本医療情報学会学術大会)は2024年11月21日~24日の5日間、中島直樹氏(九州大学病院)を大会長とし、福岡国際会議場他(福岡市)で開催の予定。


その他の記事

第35回関東医療情報技師会/診療情報標準化の重要性を各分野から改めて訴える(24.4.22)

 関東医療情報技師会は、4月6日、東京医科大学病院9階 臨床講堂(東京・新宿区)において、第35回関東医療情報技師会を開催した。「関東医療情報技師会」は、年に4回程度、勉強会を開催しており、その35回目となる。今回は医療情報技師だけでなく、ベンダや医療関係者にも広く門戸を開放した勉強会であり、約150名が参加…

島津製作所/恒例のレントゲン祭─リアル開催(2024.2.20)

 島津製作所は、毎年ヴィルヘルム・レントゲン博士の命日に博士の功績を称え遺徳を偲ぶ「レントゲン祭」と記念講演会を、2月9日、本社(京都・中京区)にて開催した。今回は101回目で、4年振りのリアル開催となる。  冒頭、医用機器事業部長の園木清人氏は式辞を述べた後、同社の最新トピックスを紹介。「高齢化、QOL向…

保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)/恒例の新春講演会&賀詞交換会を4年振りに対面で開催(2024.2.20)

 保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)は、1月23日、年初恒例のJAHIS新春講演会および賀詞交換会をイイノホール&カンファレンスセンター(東京・千代田区)で、対面方式での開催を4年振りに行った。  第1部となる講演会では、JAHIS総務会長の下山赤城氏の挨拶の後、同運営会議議長の大原通宏氏が「2024年の年頭に…

メドレーとグロービス・キャピタル・パートナーズ/「なぜいま医療DXが必要なのか?~医療DXの現在地とこれから~」セミナーレポート(2024.2.20)

 メドレーとグロービス・キャピタル・パートナーズは、1月18日、メドレー本社(東京・港区)にて、メディア向けセミナー「なぜいま医療DXが必要なのか?~医療DXの現在地とこれから~」を開催した。  同セミナーには両社から1名ずつが登壇。最初に、グロービス・キャピタル・パートナーズの福島智史氏が「医療DXを取り…

日本放射線腫瘍学会第36回学術大会レポート(2023.12.15)

■JASTR02023─展示会場にも多くの関係者が集う  11月30~12月2日、日本放射線腫瘍学会(パシフィコ横浜ノース)に合わせ、展示会も開催され、多くの関係者を集めた。以下に、小誌が注目する企業を紹介する。  ビードットメディカルでは陽子線治療装置の模擬装置が展示された。同社の古川氏によれば、「数年後の実用化」…

キヤノン・キヤノンマーケティングジャパン/キヤノンEXPOを8年ぶりに開催

 キヤノンとキヤノンマーケティングジャパンは、「Canon EXPO 2023」を、10月17~20日、東京と横浜で開催した。「Canon EXPO」は、2000年に開始し5年ごとに開催されてきたイベントであるが、2020年はコロナ禍の影響で中止になったことから、今回が5回目になる。キヤノングループの新製品群や先進技術、ソリューションをビ…

キヤノンメディカルシステムズ/スポーツ医療の最前線と可能性─現場からの証言

 キヤノンメディカルシステムズは、ラグビーワールドカップ2023に合わせ、9月10日、KABUTO ONE(東京・中央区)にて、「Global Sports Medicine Forum2023」を開催した。「スポーツ医療の最前線」をテーマとし、スポーツ医療関係者約100名が参加した(Webでも同数が参加)。  冒頭、瀧口登志夫社長が登壇しつぎのように…

国際モダンホスピタルショウ2023/医療情報システムを中心に昨年を上回る来場者を迎え、盛況裡に終了

 医療・介護・福祉関連製品を展示した国内最大のイベント「国際モダンホスピタルショウ2023(主催:一般社団法人日本病院会/一般社団法人日本経営協会)」が、7月12日から14日までの3日間、東京・有明のビッグサイトで開催された。また、7月31日まで、オンラインでの展示も併せて行わる。  新型コロナウイルス感染症が…

富士フイルム/グループ全体のDX推進指針と具体的事例を紹介

 富士フイルムは7月6日、本社(東京・港区)でDXに関する報道向け説明会を開催した。同説明会では、富士フイルムホールディングス執行役員CDO ICT戦略部長の杉本征剛氏と、富士フイルム執行役員 メディカルシステム開発センター長で富士フイルムホールディングスICT戦略部次長の鍋田敏之氏が登壇し、富士フイルムグルー…

第3回 アジア・グローバルヘルス・サミット/各国要人や企業経営者らが ヘルスケアの未来について 最新の動向や共通の課題を 包括・多角的に討議重ねる

  第3回アジア・グローバルヘルス・サミット(以下、ASGH)は5月17日~18日、香港特別行政区政府及び香港発展貿易局の共催にて、香港コンベンション&エキシビジョンセンターのホール3FGで行われた。現地開催(18日はオンライン開催)の17日には、三井物産と塩野義製薬の代表取締役会長が登壇した。そのセッショ…

キヤノンメディカルシステムズ/アンギオのショールームと製品安全試験センターを公開

 キヤノンメディカルシステムズは5月16日、本社(栃木県大田原市)で、今年4月に本社敷地内に完成した製品安全試験センターと、5月にオープンしたアンギオグラフィ・ショールームをメディアに公開した。  製品安全試験センターは、これまで外部に委託していた同社製品の安全規格に関する試験を社内で実施できるようにし…

インターシステムズジャパン/先進のデータ活用・分析の動向を専門家がセミナー開催

インターシステムズジャパンは、4月20日、「第4回 InterSystems 医療×IT セミナー ソリューション開発編Ⅲ」をオンライン上で開催した。同セミナーは医療ソリューション・プロバイダーに向けに3回シリーズで行なっているもので、最終回となる今回のセミナーでは、データの活用・分析の動向や、データプラットフォームのアー…

JIRA /恒例の活動方針報告─時宜得た各種対応策示す

 日本画像医療システム工業会(以下JIRA)は、4月14日、2023国際医用画像総合展(ITEM in JRC2023)会場のパシフィコ横浜(西区)にて、毎年恒例の活動基本方針に関する記者会見を行った。  JIRAは、2023年度における活動基本方針に以下の3重要課題を挙げている。①技術の進展や医療現場のニーズを踏まえた将来の医療現…

バイエル薬品 /画像診断におけるAI活用の最新動向と新製品を紹介

 バイエル薬品は4月10日、プレスセミナー「医療用画像診断におけるAI活用の最新動向と未来」をオンライン上で開催した。  セミナーでは、基調講演として村上卓道氏(神戸大学 放射線診断学教授)が「画像診断におけるAIの役割」と題した講演を行った。  村上氏は、まず、画像診断機器の技術的進歩に触れ、CTによる多…

富士フイルム /グループシナジー創出とIT・AI技術の活用を加速する

 富士フイルムは、4月5日、同社のメディカル事業における新製品発表会を本社(東京・港区)において行った。新製品の発表、紹介に先んじて、富士フイルム執行役員メディカルシステム事業部長兼富士フイルムヘルスケア代表取締役会長の秋山雅孝氏が「メディカルシステム事業の取り組みについて」をテーマに、まずメディカ…

TOPへ