キヤノン 画論 26th The Best Image/更にレベル向上?年末恒例の医用画像コンテスト

 キヤノンメディカルシステムズは2018年12月16日、東京国際フォーラム(千代田区)で「画論 26th The Best Image」を開催した。同イベントは、同社製CT、MRI、超音波の3画像診断装置による画像の品質に加え、被験者へのメリット、撮影・処理技術の工夫等、臨床的価値 を総合的に判断するコンテストであり、今回26回目を迎えた。
 今回の応募総数はCT、MR、超音波の3部門合計447件で、同日午前中には最終選考画像57件によるディスカッションおよび審査が行われた。午後には、上記3部門の上位入賞画像の発表および表彰式が開催された。

AIの画像診断への可能性を講演

表彰式に先立ち、3部門ごとに特別講演が行われた。
CTでは、粟井和夫氏(広島大)が「Deep LearningがもたらすCT画像のquantam leap」と題して講演。Deep Learning技術を用いた画像再構成技術であるDLRについて、その概略を説明し、臨床上の可能性について臨床画像を提示しながら解説した。粟井氏「強力なノイズ低減にも関わらず、高い空間分解能を維持できる画像再構成技術だ。低線量あるいは標準線量の撮像では、最も高画質を得ることができる画像再構成技術であり、体格の大きな患者でも高画質が得られるなど汎用性が高く、画像再構成時間もhybrid IRとほぼ同じで十分臨床に利用できる。今後、画像再構成の標準オプションとなる可能性がある」と高く評価した。
 
MRでは、山下康行氏(熊本大)が「画像診断と機械学習 そしてDeep Learning ReconstructionによるMRI画像にあたえるインパクト」と題して講演した。山下氏は、まずDeep Learningについて概要を紹介した後、AI技術が放射線科にもたらすインパクトについて説明。MRIに対しては、トレードオフの関係にあった画像の高精細化と検査時間の短縮を実現する技術として、DLRへの期待を述べた。そして、DLRを用いた画像と検査時間のデータを供覧し、その有用性を解説。「画像診断の領域で、検査のオーダから患者さんのマネジメントなどにAI技術が取り込まれ、インパクトを与えるのではないか。DLRは様々なシーケンスに応用でき、ルーチン検査での撮像時間の短縮や高分解能画像が要求される検査でも威力を発揮すると期待している」と語った。
 
超音波においては、同社の嶺 喜隆氏が心臓の壁運動、肝臓の組織性状、4D/3D、超高分解能などをテーマに、最新技術を解説。続いて濵口浩敏氏(北播磨総合医療センター)が「Aplio iシリーズでみる血管エコーの世界」について講演した。
同氏は超音波診断の工夫やAplio iシリーズの最新技術を用いたエコー診断の症例を紹介した後、同院における同シリーズ活用の現況を報告。同院では同シリーズを機種別に超音波検査室、手術室、救急室で使い分けており、同氏は特に救急室での有用性を強調。「超音波診断は、Aplioシリーズの登場により、今まで以上に詳細な病態評価が可能になった。超音波装置は、適切な場所に配置してこそ真価を発揮する」と述べた。

閉会に際し、瀧口登志夫社長が挨拶し、「日々の診療における熱い思いを原動力に、画像診断装置の開発を続けてきた。当社は、世界で初めてDeep Learning技術を活用した画像再構成技術をCTに搭載し、今後はMRIにも拡大する。この新しいAI技術を使って臨床価値を高めることに力を尽くしたい」と述べた。

◆画論 26th The Best Image 入賞施設

≪CT部門≫
◎1~160列部門【最優秀賞】岩手医科大学附属病院【テクニカル賞】札幌医科大学附属病院【優秀賞】大原綜合病院 TMGあさか医療センター一宮西病院
◎1~160列(心血管部門)【最優秀賞】平塚市民病院【優秀賞】湘南鎌倉総合病院
◎Aquilion ONE部門【最優秀賞】岩手医科大学附属病院循環器医療センター【テクニカル賞】大原綜合病院 横須賀市立市民病院【優秀賞】新潟市民病院 富山労災病院 佐世保市総合医療センター
◎Aquilion ONE(心血管部門)部門【最優秀賞】華岡青洲記念心臓血管クリニック 京都府立医科大学附属病院【テクニカル賞】華岡青洲記念心臓血管クリニック 順天堂大学医学部附属順天堂医院【優秀賞】川崎幸病院 和歌山医療センター 福岡和白病院
≪MR部門≫
◎1.5テスラ以下部門【最優秀賞】自治医科大学附属さいたま医療センター【テクニカル賞】三荻野病院【優秀賞】高瀬クリニック 蓮田病院 自治医科大学附属さいたま医療センター 草加市立病院 心臓画像クリニック飯田橋 津山中央病院島の病院おおたに
◎1.5テスラ以下(脳神経)部門【最優秀賞】済生会熊本病院【テクニカル賞】安永脳神経外科【優秀賞】横浜新緑総合病院
◎3テスラ部門【最優秀賞】自治医科大学附属さいたま医療センター【テクニカル賞】福山市民病院【優秀賞】東名厚木病院
◎3テスラ(脳神経)部門【最優秀賞】等潤病院【優秀賞】藤田医科大学病院【Clinical Update賞】佐渡総合病院 等潤病院
≪超音波部門≫
◎心臓部門【最優秀賞】岡山大学病院【優秀賞】国立循環器病研究センター 九州大学病院 筑後市立病院
◎血管部門【最優秀賞】東邦大学医療センター大橋病院【優秀賞】仙台厚生病院 滋賀県立総合病院 関西電力病院
◎腹部部門【最優秀賞】成田赤十字病院【優秀賞】松園第二病院 相模原赤十字病院 飯田市立病院 北九州市立八幡病院
◎乳腺・甲状腺・表在部門【最優秀賞】札幌禎心会病院【優秀賞】東京医科大学八王子医療センター 金沢医科大学病院 刈谷豊田総合病院


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