第49回日本医療福祉設備学会/HOSPEX Japan2020

第49回日本医療福祉設備学会は、11月11~12日の2日間、初となるWeb開催となった。
開会式で学会長の佐々木久美子氏(医療法人社団 直和会・社会医療法人社団 正志会 本部 看護部業務担当部長/HEAJ理事)が挨拶し、「新型コロナウイルス感染症の流行下、医療福祉の領域でもまさに命がけの対応を迫られている。学会開催自体を検討したが、学会として今後の対応等、情報の収集と発信を行う責務があると考えた」とWeb開催に至る経緯を説明。今大会の緊急テーマを「危機に立ち向かうホスピタル・エンジニアリング~COVID-19、災害への備えと対応」とし、プログラムについて、副学会長の小室克夫氏(聖路加国際大)らと紹介した。

初日の講演セッション「新型コロナウイルス感染症の現状と現場での対応」では2人の演者が講演した。
はじめに、堀 賢氏(順大)が「新型コロナウイルス感染症における空調制御の課題」と題して講演。新型のコロナウイルス(以下、COVID-19)特徴について、感染経路や伝播の特異性等を紹介した後、順天堂大学医院における同感染症への具体的な対応を説明した。「エアロゾル感染経路が水平伝播に寄与する割合や感染濃度、安全な最小換気要件と曝露時間など、不明点がまだ多い」と述べた上で、「エアロゾル低減策はエンジニアリングで達成できるはず。知見は、一般の商業施設、公共施設などにも応用可能だ」と述べた。
次いで、進藤亜子氏(都立駒込病院)が「新型コロナウイルス感染症患者の受け入れ状況と病院空調設備の課題」と題して講演。都立駒込病院におけるCOVID-19感染症への具体的対策を説明した後、「陰圧設備の整備が重要だが、未整備でも、機械、自然、追加の各換気による対策を施せば、陰圧室がなくても対応が可能」と語った。
 特別講演では「COVID-19 職能団体等の取り組み」をテーマに3題の講演が行われた。猪口雄二 氏(寿康会理事長/日本医師会副会長/全日本病院協会会長)は「COVID-19における病院経営の実態と国・地方自治体の支援」と題して講演。「COVID-19感染症は4月以降、病院に大きな打撃を与えた。二次補正や予備費によって経営支援が行われたが都道府県によって対応に差がある。6~9月における経営状況は回復しつつあるが、2020年度は赤字経営の病院が増加すると思われる。新興・再興感染症に対し、医療計画、地域医療構想等において準備病床を確保し、地域医療を維持できるよう病院経営に対する支援が必要」と述べた。

 例年、日本医療福祉設備学会と同じ会場で併催されているが、本年の病院/福祉設備機器の専門展示会である「HOSPEX Japan2020」は、学会とは異なり、11月11~13日、東京ビッグサイト(江東区)西展示場で通常開催された(一部学会のプログラムは展示会場でも放映)。主催は日本医療福祉設備協会・日本能率協会、展示実行計画委員長は高階雅紀氏(阪大病院)。参加企業数は、コロナ禍の影響下158社、総ブース数は246と昨年より若干減少した。
会場は、「病院設備機器」、「介護・福祉設備機器」、「病院・福祉給食」、「医療福祉機器開発テクノロジー」を中心に、昨年からの「災害医療・災害対策ゾーン」と新規に「メディカル建築デザイン展」を加えた展示が行われた。
本年の展示の傾向としては、やはりCOVID-19流行を受けての、感染防止策への提案が目を引いた。それは講演会、セミナー、シンポジウムでの演題についても同様であった。
なお、COVID-19対策として、入り口での来場者に対する検温の徹底や順路の管理、講演会等での座席の配置等において、来場者が密にならない運営体制が敷かれた。
セミナー、講演会、シンポジウムも、計79設けられ、厳しい状況下としては充実したものとなった。
次回の「HOSPEX Japan2021」は、2021年11月24~26日に、同じく東京ビッグサイトで開催される予定。


その他の記事

GEヘルスケア・ジャパン/ セラノスティクスへの期待と国内における課題を解説(24.11.25)

GEヘルスケア・ジャパンは10月30日、Web上でONLINEメディアセミナー「がん治療の新たな展望-セラノスティクスの新たな展望と課題」を開催した。 同セミナーの2回目となる今回は、セラノスティクスによる診断・治療の見える化と国内導入の動向についての講演が行われた。 同社執行役員の松葉香子氏の挨拶に次いで、…

コネクタソン/23社が相互接続性を確認、来年は欧州との共同ワークショップレポート(24.11.25)

日本IHE協会は10月21~25日の5日間、東京都立産業貿易センター台東館(東京・台東区)で「IHE-J 2024コネクタソン」を開催した。 コネクタソンとは、IHE-Jのテクニカルフレームワークを実装した機器・システムの相互接続性を確認するために毎年実施しているもの。今年は、放射線検査(Radiology)、内視鏡(Endoscopy)…

エム・シー・ヘルスケア/次世代に向けた持続的な医療のあり方を討議(24.11.25)

エム・シー・ヘルスケアは11月1日、品川インターシティホール(東京・港区)にて、「第25回病院の経営を考える会」を開催した。今回のテーマは「次世代に向けた持続的な医療のあり方」。午前中に3ワークショップを同時開催し、午後は講演1、2それぞれの終了後に進行役と登壇者によるディスカッションが行われた。 ワー…

GEヘルスケア・ジャパン/セラノスティクス医療啓発と普及目指しセミナー開催(24.10.21)

GEヘルスケア・ジャパンは9月20日、Web上でメディアセミナー「がん治療の新たな展望-セラノスティクスの新たな展望と課題」を開催した。 セラノスティクス(Theranostics)とは、治療(Therapy)と診断(Di-agnostics)を組み合わせた医療技術であり、放射線を使った薬剤で病気を診断しながら、別の放射線を用いた薬を…

日本放射線腫瘍学会/第37回学術大会の概要と肺がんへの最先端治療技術を紹介(24.1010)

日本放射線腫瘍学会(JASTRO)は9月19日、トラストシティ カンファレンス京橋(東京・中央区)で、学術大会前の恒例のプレスカンファレンスを開催した。今回は「肺がんへの放射線治療」をテーマに、同学会の主要メンバーが講演を行った。 初めに、同学会理事長の宇野 隆氏(千葉大)が挨拶し、放射線治療の現状と学会…

がん対策推進企業アクション/セミナーリポート(24.9.21)

がん対策推進企業アクション(厚生労働省委託事業)は、8月27日、神田明神文化交流館(東京・千代田区)にて、恒例のメディア向けセミナーを開催(オンライン含)。「がん教育の意味~ヘルスリテラシー最低国からの脱出に向け」を演題に、同事業のアドバイザリーボードメンバーの中川恵一氏(東大)が講演した。 同ア…

国際モダンホスピタルショウ2024レポート(24.8.15)

医療・介護・福祉関連製品を展示した国内最大のイベント「国際モダンホスピタルショウ2024(主催:一般社団法人日本病院会/一般社団法人日本経営協会)」が、7月10日から12日までの3日間、東京・有明のビッグサイトで開催された。今回のテーマは「健康・医療・福祉の新たなステージ ~DX推進による、確かな進化へ~」。…

JRC/「JRC2024」国際CTシンポジウム等も開催  ITEM2024は延べ来場者数約1割増で活況を呈す(24.5.1)

 放射線医療関連の国内最大イベント「JRC2024」が、4月11~14日の4日間、例年どおりパシフィコ横浜で開催された。主催は、一般社団法人日本ラジオロジー協会で、第83回日本医学放射線学会(JRS)総会(会長:陣崎雅弘氏=慶大)、第80回日本放射線技術学会(JSRT)総会学術大会(大会長:根岸 徹氏=東京都立大)、第127…

第35回関東医療情報技師会/診療情報標準化の重要性を各分野から改めて訴える(24.4.22)

 関東医療情報技師会は、4月6日、東京医科大学病院9階 臨床講堂(東京・新宿区)において、第35回関東医療情報技師会を開催した。「関東医療情報技師会」は、年に4回程度、勉強会を開催しており、その35回目となる。今回は医療情報技師だけでなく、ベンダや医療関係者にも広く門戸を開放した勉強会であり、約150名が参加…

島津製作所/恒例のレントゲン祭─リアル開催(2024.2.20)

 島津製作所は、毎年ヴィルヘルム・レントゲン博士の命日に博士の功績を称え遺徳を偲ぶ「レントゲン祭」と記念講演会を、2月9日、本社(京都・中京区)にて開催した。今回は101回目で、4年振りのリアル開催となる。  冒頭、医用機器事業部長の園木清人氏は式辞を述べた後、同社の最新トピックスを紹介。「高齢化、QOL向…

保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)/恒例の新春講演会&賀詞交換会を4年振りに対面で開催(2024.2.20)

 保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)は、1月23日、年初恒例のJAHIS新春講演会および賀詞交換会をイイノホール&カンファレンスセンター(東京・千代田区)で、対面方式での開催を4年振りに行った。  第1部となる講演会では、JAHIS総務会長の下山赤城氏の挨拶の後、同運営会議議長の大原通宏氏が「2024年の年頭に…

メドレーとグロービス・キャピタル・パートナーズ/「なぜいま医療DXが必要なのか?~医療DXの現在地とこれから~」セミナーレポート(2024.2.20)

 メドレーとグロービス・キャピタル・パートナーズは、1月18日、メドレー本社(東京・港区)にて、メディア向けセミナー「なぜいま医療DXが必要なのか?~医療DXの現在地とこれから~」を開催した。  同セミナーには両社から1名ずつが登壇。最初に、グロービス・キャピタル・パートナーズの福島智史氏が「医療DXを取り…

日本放射線腫瘍学会第36回学術大会レポート(2023.12.15)

■JASTR02023─展示会場にも多くの関係者が集う  11月30~12月2日、日本放射線腫瘍学会(パシフィコ横浜ノース)に合わせ、展示会も開催され、多くの関係者を集めた。以下に、小誌が注目する企業を紹介する。  ビードットメディカルでは陽子線治療装置の模擬装置が展示された。同社の古川氏によれば、「数年後の実用化」…

第43回医療情報学連合大会レポート(2023.12.15)

■テーマは「医療情報の安全な流通と活用」―時代を反映した講演が人気博す  第43回医療情報学連合大会(第24回日本医療情報学会学術大会)が2023年11月22~25日、神戸ファッションマート(神戸市東灘区)で開催された。大会長は松村泰志氏(大阪医療センター)。同大会は、現地開催に加えオンライン配信を含むハイブリ…

TOPへ