国際モダンホスピタルショウ 2015

 毎夏恒例の、医療・福祉・介護関連製品を展示した国内最大の見本市「国際モダンホスピタルショウ 2015」が、東京ビッグサイト(東京・有明)で7月15~17日の3日間開催され、来場者は前回より1889人増の8万2149人を数えて大盛況だった。
 5つのゾーンに分かれた会場の中でも、展示内容や面積などで一際目立っていたのが「医療情報システムゾーン」であり、同ゾーンの出展社数は136を超えた。中でも、電子カルテシステムが17社の企業から出展・実演されたほか、ヘルスケアサービスやレセプトソフト、在宅療養チームケア関連分野でのクラウド対応システムの展示も注目を集めた。
<オープニングセッション>
 初日に行われた恒例のオープニングセッションでは、日本病院会会長の堺 常雄氏が、「今、求められている医療供給体制改革」をテーマに講演を行った。「現状の医療供給体制」「診療報酬改定」「地域医療構想」「財政健全化」を骨子に、これからの病院対応について言及した。特に診療報酬改定については、平成24年度の診療報酬改定後、減少施設・病院は期待通りに伸びていないことを指摘した上で、診療報酬と地域医療構想の連動を強調した。また、病院内においては診療体制の見直しが必要だとし、総合診療と専門診療について有機的な連動の重要性を示し、今後病院は「地域医療構想の中での自院の役割を適正に判断することが不可欠だ」としめくくった。
<病院経営フォーラム>
 病院経営フォーラムでは、山本隆一氏(医療情報システム開発センター理事長/東大)が、「マイナンバー制度の医療分野での活用について」と題して講演した。山本氏は、マイナンバー制度開始に至るまでの経緯を述べ、さらに同制度と同時に改正される予定の個人情報保護法の改正案のその内容と課題について詳しく説明した。その上で、マイナンバー制度が医療分野で具体的にどのように活用されていくかについて解説。医療界が求める、マイナンバーとは別のものとなる医療等IDと、こうした番号制度を用いたPersonal Health Recordのあり方について私見を述べた。
<ITフォーラム>
 ITフォーラム①「健康・医療分野におけるビッグデータの活用」では、副島秀久氏(済生会熊本病院)が、「医療ビッグデータの分析・可視化がここまで可能になった」について講演。同氏は「電子クリニカルパス導入の最終目標は医療の質向上」という前提のもと、NECと共同研究開発したパス分析システム「NECV」を活用したビッグデータ抽出への取り組みと臨床効果などについて述べた。また、ITによるビッグデータ分析の今後については、「分析結果をリアルタイムに臨床へフィードバックする仕組みが多くの病院に普及するのは、比較的早いのではないかとみている」と論じた。続いて村下公一氏(弘前大COI研究推進機構)が「健康ビッグデータ解析で『寿命革命を』〜疾患予兆発見プロジェクト戦略〜」と題し、健康増強を主目的としたビッグデータ解析を中心とするCOIの基本戦略、その解析結果から見える“目指す健康像”、および社会実装に向けた戦略展開などについて語った。
<出展者プレゼンテーションセミナー>
 出展者が主催する出展者プレゼンテーションセミナーは、23題行われた。
 保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)のセミナーでは、真野 誠氏(JAHIS戦略企画部運営幹事)が、「医療ITをめぐる動向ガイダンス」について講演。同氏は国の方針としての社会保障と税の一体改革の現況を述べた後、マイナンバー制度についても言及。また、昨今のITの話題として挙げた平成27年度「世界最先端IT国家創造宣言」と厚労省の医療分野におけるICT化の推進の中で、「情報標準化」の重要性を指摘。レセコンからの診療情報(薬剤等)を連携させるためのガイドや、在宅医療と介護分野の標準化の資料作成など、同工業会における支援活動の概要を語った。最後にJAHIS2025ビジョンとして、「医療情報は次に“空間を超えた連携”、その先に“時間を超えたデータリンク”が必要になる。JAHISは前者について『セキュアなネットワークによる全情報のやりとり』、後者に関しては『PHR、ナショナルデータベースの発展』を支援することが使命と考えている」と述べた。
 アライドテレシスのセミナーでは、山下芳範氏(福井大病院)が「医療情報における仮想化技術・IoT技術の活用について」をテーマに講演した。同氏は同院での実証実験や臨床導入の実例を紹介しつつ、それらの技術の現況および将来像について語った。同氏は仮想化技術について「病院システムのあり方を変えてくれる好機と捉え、これからのICTインフラの要と考えるべき」と語り、「仮想化によりスマートデバイス活用の自由度が高まり、それによってワークフローを進化的に変えられる」と指摘。IoT技術に関しては、IoTゲートウェイを活用した位置情報システム(IMES)による次世代通信の活用例などについて概要を解説した。同氏はその中で、「例えばウェアラブルセンサーをネットワーク化し、スマホと連携させると臨床現場で得られる情報が劇的に変わる。それを電子カルテやナースコール等とどう結びつけるかが今後、医療における活用法になると考える」と述べた。
 インターシステムズジャパンによるセミナー「ICTマネジメントによる有機的連鎖の実現に向けた医療情報基盤構築の取り組み」では、島川龍載氏(広島赤十字・原爆病院)が、広島赤十字・原爆病院における医療情報連携基盤構築の背景を説明。新棟建築に伴い、ICTマネジメントによるシステムの最適化を進めて院内のICTインフラ整備を推進。同社の統合プラットフォーム「Ensemble」を活用した、病院経営の健全化と医療の質の向上を図るために、階層別に親和性の高い医療情報基盤構築を実現したと述べた。
 Skyによるセミナー「そうか!そんな方法もあったんだ“PC管理”~リスクに立ち向かう3つの機能」は、奥村幸光氏(名古屋掖済会病院)が講演。奥村氏は、同氏がセンター長を務める同院情報管理センターの現況と業務内容を紹介。IT資産の管理・運用と情報漏えいなどの医療ITに関するリスク低減のために、IT資産管理ソフトが必要であることを強調。さらに、今後はマイナンバー制度開始で、病院が管理・運用する情報の増加が見込まれることから、より一層の情報漏えい対策が必要であると述べた。
 東芝メディカルシステムズのセミナーでは、神薗淳司氏(北九州市立八幡病院)が「電子カルテによる小児早期警告スコアリングシステム(PEWSS)運用と急変対応への医療安全」と題して講演した。PEWSSは、小児入院患者の院内急変対応を支援するためのITシステムとして、同院と同社の共同開発の形で2011年初頭に計画が始まり、4年ほどで完成。開発の経緯について、同氏は「入院患者がICUに運び込まれるほど病態が急変する時は、実は数時間前にバイタルが急変しているといわれている。その早期発見および急変時の状況認識の標準化等を目的として開発した。入院全患者のアラートをスコアリングし評価するためのシステムである」と語り、続いて電子カルテと連動したタブレット端末による同システムの活用概要について述べた。
<看護セッション>
 國本陽子氏(セコム医療システム 訪問看護ステーション)は、「訪問看護のICT化の取り組み―モバイル導入の実際」を講演。モバイル端末を導入した経験から導入に伴う現場の変化を挙げ、「1年経過して一番感じていることは、現場にICT化を浸透させる難しさである。そのため、ICT化推進プロジェクトを立ち上げ現場にアプローチしながら『運用マニュアル』を作成した」と語った。松月みどり氏(日本看護協会前常任理事/愛知医科大)は、「看護の質向上のためのデータ収集とマネジメント」を講演。客観的な看護の質評価のために、日本看護協会が2015年度から本格的に実施しているDiNQL事業の概要を説明し、「看護の質向上には、ベンチマーク評価を見るだけでなく、他の病院の人とのつながりを通して、情報や知識の共有化を図ることが必要」と述べた。
<公開シンポジウム>
 日本病院会主催の公開シンポジウムは、「病院の新時代-何が変わるか」をテーマに、有賀 徹(昭和大)、山元恵子(富山福祉短大)両氏を座長に行われた。基調講演は、相澤孝夫氏(相澤病院理事長・院長)が、「病院の新時代-何が変わるか」の題で講演。その中で、団塊の世代が後期高齢者になる2025年問題における「高齢化の進展に伴う変化」について、慢性疾患・複数疾病やリハビリ・在宅医療の必要患者の増加を指摘した。そしてこれらに対処する医療供給体制の改革の方向性として、高度急性期から在宅医療まで、患者の状態に応じた適切な医療体制の整備の必要性を挙げた。続いて、本田麻由美(読売新聞社)、栗原正紀(長崎リハビリテ―ション病院)、早坂由美子(北里大学病院)、松浦佳紀(特別養護老人ホーム太閤の杜)のシンポジスト4氏が「新時代での医療・病院・患者」をそれぞれの立場から見据えた発表を行い、最後に参加者全員によるディスカッションが開かれた。


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