日本医療機器学会/第93回日本医療機器学会大会

 一般社団法人日本医療機器学会は、5月31日~6月2日にパシフィコ横浜(横浜市)で、「第93回日本医療機器学会大会」を開催した。今大会のテーマは「医療技術、医療機器産業の明日を考える」。
 初日は、4つのマネジメントセミナーが行われ、セミナー4は「進化」をテーマに4人の演者が講演。加見谷将人氏(神原病院)は、「進化と医療」を演題に講演した。同氏は、水深60mの海中に10分以上留まれる潜水能力を進化により獲得したバジャウ族などを例に挙げ、進化の定義を解説。人類の進化に今後必要な要件(再生、代替、補助、賦活化)を支えるのが医療・医療機器であるとし、現在研究・開発が進む事例として幹細胞の再生医療や免疫賦活による抗がん治療などを紹介した上で、「医療で今後重要になるのは正確な判断とそれに基づく結論」と述べた。
 続いて臼杵尚志氏(香川大)が、「医学・医療機器の進化とそれを支えるもの」について講演。同氏は、外科の進化の過程を創成期から事例とともに振り返り、「メスの使用に付随する疼痛や感染などへの対応が手術の進化であった」と示した。その後現代に話を移し、鏡視下手術やロボット手術の「洗浄困難」という課題克服に保守機器の進化が寄与することに触れ、「医療・医療機器の進歩は時代要請に応じ欠点を補完する努力に支えられたもので、他分野の技術なども貢献することが、これからの進化のヒントにもなる」と述べた。
 中島章夫氏(杏林大)は、「進化する医療機器シミュレーション教育の現状」をテーマに、医療での同教育の歴史と考え方を述べ、臨床工学技士教育養成施設と医療施設での最新のシミュレーション教育として聖路加国際大学シミュレーションセンターの活動などを紹介。「進化に加え変革と発展という考え方が、今後の医療機器には必要」と結んだ。
 酒井順哉氏(名城大)は、「病院情報システム発展の先に期待するもの」をテーマに講演を行った。同氏は、病院情報システムを黎明期(医事会計)、発展期(オーダリング)、充実期(電子カルテ)に分けて導入経緯を解説し、将来の課題として「ネットワーク連携とトレーサビリティ強化」について説明。トレーサビリティに関しては、「独自のバーコードではなく、標準化されたものを使うべき。そうでないと患者安全や流通効率化は図れない」と提言した。
 2日目は、第1会場でパネルディスカッション1「病院機能を支えるIoT」が行われた。谷部 聡氏(聖路加国際大)は、「病院におけるICタグの活用事例」、藤沼敏弘氏(日本光電工業)は、「重症部門システムを用いた看護業務の現状と将来展望」、村瀬聡孝氏(テルモ)が「医療環境における医療安全と生産性向上のために」を講演。瀬島啓史氏(東京医科歯科大)は、「医療機器の進化は何をもたらすか」をテーマに講演し、臨床工学技士(CE)と臨床ME専門認定士の働きを現在の医療機器の進化と対比し、「CEは患者と医療機器に最も近い存在であり、機器の進化を支え、安全で良質な医療を提供するために不可欠」と結論付けた。
 シンポジウム1「医療機関を狙ったサイバー攻撃の現状と医療機器の情報セキュリティ」では、美代賢吾氏(国立国際医療研究センター)が、「医療機関を狙ったサイバー攻撃:リスクと対策」と題して講演。「最近のサイバー攻撃では、その方法が標的型攻撃へと質的変換を遂げており、医療機関をターゲットとした攻撃が増えている」と指摘し、「今後は部門システムや医療機器のリスク評価やその対策も必要となってくる」と述べた。次に松山征嗣氏(トレンドマイクロ)が、「サイバー攻撃の傾向と情報セキュリティリスクのマネジメント」、最後に、「医療機器、そのシステムにおけるセキュリティ対策と課題」と題して松元恒一郎氏(日本光電工業)が講演を行った。
 シンポジウム5「鋼製器具2次元シンボル刻印により生まれる効果」では、落合慈之氏(NTT東日本関東病院)が、「手術セット最適化による経済効果」と題して講演するなど2次元バーコードによる医療器材管理の経済効果について5人の演者が講演した。


その他の記事

島津製作所/恒例のレントゲン祭─リアル開催(2024.2.20)

 島津製作所は、毎年ヴィルヘルム・レントゲン博士の命日に博士の功績を称え遺徳を偲ぶ「レントゲン祭」と記念講演会を、2月9日、本社(京都・中京区)にて開催した。今回は101回目で、4年振りのリアル開催となる。  冒頭、医用機器事業部長の園木清人氏は式辞を述べた後、同社の最新トピックスを紹介。「高齢化、QOL向…

保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)/恒例の新春講演会&賀詞交換会を4年振りに対面で開催(2024.2.20)

 保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)は、1月23日、年初恒例のJAHIS新春講演会および賀詞交換会をイイノホール&カンファレンスセンター(東京・千代田区)で、対面方式での開催を4年振りに行った。  第1部となる講演会では、JAHIS総務会長の下山赤城氏の挨拶の後、同運営会議議長の大原通宏氏が「2024年の年頭に…

メドレーとグロービス・キャピタル・パートナーズ/「なぜいま医療DXが必要なのか?~医療DXの現在地とこれから~」セミナーレポート(2024.2.20)

 メドレーとグロービス・キャピタル・パートナーズは、1月18日、メドレー本社(東京・港区)にて、メディア向けセミナー「なぜいま医療DXが必要なのか?~医療DXの現在地とこれから~」を開催した。  同セミナーには両社から1名ずつが登壇。最初に、グロービス・キャピタル・パートナーズの福島智史氏が「医療DXを取り…

日本放射線腫瘍学会第36回学術大会レポート(2023.12.15)

■JASTR02023─展示会場にも多くの関係者が集う  11月30~12月2日、日本放射線腫瘍学会(パシフィコ横浜ノース)に合わせ、展示会も開催され、多くの関係者を集めた。以下に、小誌が注目する企業を紹介する。  ビードットメディカルでは陽子線治療装置の模擬装置が展示された。同社の古川氏によれば、「数年後の実用化」…

第43回医療情報学連合大会レポート(2023.12.15)

■テーマは「医療情報の安全な流通と活用」―時代を反映した講演が人気博す  第43回医療情報学連合大会(第24回日本医療情報学会学術大会)が2023年11月22~25日、神戸ファッションマート(神戸市東灘区)で開催された。大会長は松村泰志氏(大阪医療センター)。同大会は、現地開催に加えオンライン配信を含むハイブリ…

キヤノン・キヤノンマーケティングジャパン/キヤノンEXPOを8年ぶりに開催

 キヤノンとキヤノンマーケティングジャパンは、「Canon EXPO 2023」を、10月17~20日、東京と横浜で開催した。「Canon EXPO」は、2000年に開始し5年ごとに開催されてきたイベントであるが、2020年はコロナ禍の影響で中止になったことから、今回が5回目になる。キヤノングループの新製品群や先進技術、ソリューションをビ…

キヤノンメディカルシステムズ/スポーツ医療の最前線と可能性─現場からの証言

 キヤノンメディカルシステムズは、ラグビーワールドカップ2023に合わせ、9月10日、KABUTO ONE(東京・中央区)にて、「Global Sports Medicine Forum2023」を開催した。「スポーツ医療の最前線」をテーマとし、スポーツ医療関係者約100名が参加した(Webでも同数が参加)。  冒頭、瀧口登志夫社長が登壇しつぎのように…

国際モダンホスピタルショウ2023/医療情報システムを中心に昨年を上回る来場者を迎え、盛況裡に終了

 医療・介護・福祉関連製品を展示した国内最大のイベント「国際モダンホスピタルショウ2023(主催:一般社団法人日本病院会/一般社団法人日本経営協会)」が、7月12日から14日までの3日間、東京・有明のビッグサイトで開催された。また、7月31日まで、オンラインでの展示も併せて行わる。  新型コロナウイルス感染症が…

富士フイルム/グループ全体のDX推進指針と具体的事例を紹介

 富士フイルムは7月6日、本社(東京・港区)でDXに関する報道向け説明会を開催した。同説明会では、富士フイルムホールディングス執行役員CDO ICT戦略部長の杉本征剛氏と、富士フイルム執行役員 メディカルシステム開発センター長で富士フイルムホールディングスICT戦略部次長の鍋田敏之氏が登壇し、富士フイルムグルー…

第3回 アジア・グローバルヘルス・サミット/各国要人や企業経営者らが ヘルスケアの未来について 最新の動向や共通の課題を 包括・多角的に討議重ねる

  第3回アジア・グローバルヘルス・サミット(以下、ASGH)は5月17日~18日、香港特別行政区政府及び香港発展貿易局の共催にて、香港コンベンション&エキシビジョンセンターのホール3FGで行われた。現地開催(18日はオンライン開催)の17日には、三井物産と塩野義製薬の代表取締役会長が登壇した。そのセッショ…

キヤノンメディカルシステムズ/アンギオのショールームと製品安全試験センターを公開

 キヤノンメディカルシステムズは5月16日、本社(栃木県大田原市)で、今年4月に本社敷地内に完成した製品安全試験センターと、5月にオープンしたアンギオグラフィ・ショールームをメディアに公開した。  製品安全試験センターは、これまで外部に委託していた同社製品の安全規格に関する試験を社内で実施できるようにし…

インターシステムズジャパン/先進のデータ活用・分析の動向を専門家がセミナー開催

インターシステムズジャパンは、4月20日、「第4回 InterSystems 医療×IT セミナー ソリューション開発編Ⅲ」をオンライン上で開催した。同セミナーは医療ソリューション・プロバイダーに向けに3回シリーズで行なっているもので、最終回となる今回のセミナーでは、データの活用・分析の動向や、データプラットフォームのアー…

JIRA /恒例の活動方針報告─時宜得た各種対応策示す

 日本画像医療システム工業会(以下JIRA)は、4月14日、2023国際医用画像総合展(ITEM in JRC2023)会場のパシフィコ横浜(西区)にて、毎年恒例の活動基本方針に関する記者会見を行った。  JIRAは、2023年度における活動基本方針に以下の3重要課題を挙げている。①技術の進展や医療現場のニーズを踏まえた将来の医療現…

バイエル薬品 /画像診断におけるAI活用の最新動向と新製品を紹介

 バイエル薬品は4月10日、プレスセミナー「医療用画像診断におけるAI活用の最新動向と未来」をオンライン上で開催した。  セミナーでは、基調講演として村上卓道氏(神戸大学 放射線診断学教授)が「画像診断におけるAIの役割」と題した講演を行った。  村上氏は、まず、画像診断機器の技術的進歩に触れ、CTによる多…

富士フイルム /グループシナジー創出とIT・AI技術の活用を加速する

 富士フイルムは、4月5日、同社のメディカル事業における新製品発表会を本社(東京・港区)において行った。新製品の発表、紹介に先んじて、富士フイルム執行役員メディカルシステム事業部長兼富士フイルムヘルスケア代表取締役会長の秋山雅孝氏が「メディカルシステム事業の取り組みについて」をテーマに、まずメディカ…

TOPへ