HOSPEX Japan 2016・第45回日本医療福祉設備学会

 病院/福祉機器に関する展示会「HOSPEX Japan 2016」は、例年より1ヵ月早い10月26~28日の3日間、東京ビッグサイト(東京・江東区)で開催された。会場は、西1・2ホールおよびアトリウムと雰囲気を変えて開かれた。主催は、日本医療福祉設備協会と日本能率協会で、3日間を通じての来場者は2万593人と盛況だった。350社/700ブースの展示や講演会、「医業経営」「医療機器安全管理」「病院・福祉給食」「医療・福祉機器開発テクノロジー」「看護」などに分かれたセミナーを開催し、今の医療・看護・介護・福祉が直面する問題の提起とその解決策に迫った。
 第45回日本医療福祉設備学会は、26、27日の両日、東京ビッグサイト会議棟で、「いざという時、頼りになるホスピタルエンジニアリング」をテーマに開催された。学会長は加藤信介氏(東大生産技術研究所教授)。講演・シンポジウム・一般演題は、「感染対策」「手術室環境」「医療ロボットによるリハビリ」「災害対策」「空調設計」「無線LAN利用」など、各種医療・福祉環境をいかに支えるかを問うた内容が多かった。

<HOSPEX特別講演会>
 千先康二氏(自衛隊中央病院院長)は、27日に「医療機関におけるBCP-大規模災害・特殊災害時に医療機能を継続させるために」について講演した。①BCP概論、②医療機関こそBCP構築を、③自衛隊中央病院の取り組み、④今後の課題-特殊災害時等への取り組みなどをメインに進められた。同氏は、「BCP策定については、医療機関が最も遅れている」とし、大規模災害の医療への影響として「医療機関自体が被災し、機能できないこと」「備蓄が不十分であり、病床稼働率が高く、被災者受け入れの余裕がない」ことを挙げた。また事業継続取り組みの流れとして、経営環境の変化などに応じた発展的改善が必要だとし、「BCPに完成はなく、PDCAサイクルの継続が危機管理の本質である」と述べ、想定外を想定することの大切さを強調した。

<HOSPEXセミナー>
 初日の26日に行われた医業経営セミナーでは、日本医療福祉建築協会共催シンポジウム「病院経営と病院建築」を開催。演者は、星 北斗氏(星総合病院理事長)と河口 豊氏(元日本医療福祉建築協会会長)。星総合病院は、被災地の福島県郡山市に2015年に新病院を建築。星氏は、新病院の特徴を紹介した後、「370席のコンサートホールや鉄板焼きのできる厨房等やりたい放題やったが、これも新病院での新たな医療の提供や事業実現のために必要な建築だった」と述べた。河口氏は、「医療崩壊が問題視されるが、建築は医療を再生することはできないが、建築抜きには再生はあり得ない。建築が医療に果たせる役割は、テクニカル的には施設制約型医療の解消、ノンテクニカル的には提供側医療から患者参加型医療への転換だ」と訴えた。

第45回日本医療福祉設備学会

<学会講演>
 講演1「手術室環境におけるわが国の独創的な取り組みについて」では、4名の演者が登壇し、河尻浩司氏(エア・ウォーター防災)は、「手術室内装システムの有用性」について講演した。同氏は、①手術室内装に求められる要件、②最近の手術室の変化とトレンド、③海外の事例紹介について解説。その中で日本の手術室内装の独自性について、「パネル工法を突き詰めたところにあると考える。手術室の今後30年の見通しは困難であるが、同工法により医療ガスや電気の増設に簡単に対応できることが、他国にはない将来対応への優位性」と指摘した。

<学会長講演>
 学会初日の26日、開会式に引き続いて学会長講演が行われ、加藤信介氏(東大生産技術研究所教授/日本医療福祉設備協会理事)が、「いざという時、頼りになるホスピタルエンジニアリング-感染対策としての紫外線殺菌の活用」と題して講演した。加藤氏は、まず紫外線照射による殺菌技術の概要を紹介し、現在主流となっているUVGI(Ultraviolet Germicidal Irradiation)技術について説明した。さらに、欧米でよく用いられているUR-UVGIとID-UVGIの違いを解説。従来、空気殺菌には向いていないとされたID-UVGIについて、三井記念病院に導入された事例を使って説明し、近年のUVGI技術の進歩を検証した。

<学会セッション>
 EMC・HEAJ共催セッションは、「医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き」をメインテーマに、3名が講演した。篠澤康夫氏(総務省)は、「総務省における安心・安全な電波利用の推進に向けた取り組み」の中で、医療機関での携帯電話利用の推進と電波利用の推進について、電波環境協議会の示した指針・手引きに基づいた同省の取り組みを示した。村木能也氏(東海大)は、「医用テレメータを取り巻く電磁ノイズと対策」について講演し、院内で用いる無線LANアクセスポイントやLED照明器具、ナースコールI/Oユニットなどの機器に対して、医用テレメータに障害を与えないより低いノイズ限度値の公的規格の制定が必要だとした。花田英輔氏(佐賀大)は、「医療における無線LAN利用の問題点と対策」を講演し、「医療現場への無線LAN導入が進行中だが、情報の電子化との並行的進行が必須であり、安全な無線通信の利用は、医療の効率と安全を高める」と述べた。

<学会シンポジウム>
 26日には、シンポジウム3「革新的医療機器等の創出―医療ロボットの活用による次世代リハビリテーション」が行われた。ロボットスーツHALの開発者の山海嘉之氏(筑波大/CYBERDYNE)は、「革新的サイバニックシステム最前線」を講演。サイバニック治療の原理やHALの使用効果、開発した製品が保険適用される重要性等を語った。浅見豊子氏(佐賀大)は、「ロボットリハビリテーションの実際」を講演。佐賀大病院のロボットリハ外来で、9種のロボットを使用しているリハビリテーションを紹介。ロボットリハで機能を改善することにより生活の場面も広がると、その効果を語った。


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