富士フイルム/患者情報文書案を生成AIで自動作成する技術を開発(25.7.23)

富士フイルム/患者情報文書案を生成AIで自動作成する技術を開発(25.7.23)

 富士フイルム(本社:東京港区)は、患者の検査結果や治療履歴など患者情報を包括的に記載する文書である「サマリ」の文案を、生成AIの1つである大規模言語モデル(Large Language Model:LLM)を用いて自動生成・提示する「サマリ作成支援AI技術」を開発した。同社は本技術を、退院患者の情報をまとめた文書である「退院サマリ」の作成向けに応用し、富士フイルムメディカル(本社:東京都港区)が提供する診療文書管理・診療業務支援ソリューション「Yahgee(ヤギ―)」の新機能として、今夏より発売する予定。
 2024年4月に「医師の働き方改革」が施行されたことを契機に、全国の病院で医療従事者の労働時間を短縮するための施策検討が進められている。厚生労働省の調査では、医師の所定外労働が多く発生している最大の要因は、必要な文書の作成に時間がかかることであり、直接的な診療以外の業務負荷が非常に高いことが報告されている。特に、患者の検査結果や治療履歴などを包括的に記載する「サマリ」には、入院中の診療情報をまとめる「退院サマリ」や看護記録をまとめる「看護サマリ」などさまざまな種類が存在する。医療従事者が検査情報や電子カルテなど幅広い診療情報の中から必要なものを収集して作成する必要があることから、文書の中でも作成負担が大きいものの一つとされている。
 同社が開発した技術は、LLMを用いて「サマリ」の文案を自動作成・提示するものである。オープンソースのLLMをベースに開発した独自のLLMを用いて、診療文書管理・診療業務支援ソリューション「Yahgee」に蓄積されている診療情報を構造化する(文書を構成する要素を分解し、それぞれの関係性を一定の規則に則して整理する)ことで、文案を作成する。
 同社は長年にわたって医療に携わることで得られた医療現場のワークフローや医療文書に関する知見と、ドキュメント領域で培った自然言語処理技術を融合することで本技術を開発した。また、複数の医療機関と共同研究を行う中で、医療従事者の意見やフィードバックを取り入れたことにより、実際の医療現場で求められる文案を高精度に作成することを可能にした。さらに、生成された文案と関連性の高い診療情報をハイライトして併記する技術を用いることで、医療従事者は、文案を診療情報と照らし合わせて確認するだけで文書を作成できるため、文書作成業務の負荷軽減が期待される。

 同社は、複数の医師と本技術の有効性を検証。本技術を使用することで、「退院サマリ」の作成に要する時間を平均42%、最大60%短縮できることを確認した。また、検証に協力した医師から、サマリの文案としての妥当性や使いやすさなどの面で高い評価をもらった。年間約2万件の「退院サマリ」を作成している大規模病院で導入した場合は年間約2,700時間の作業時間削減効果が期待される。

 富士フイルムは、画像認識技術を生かしたAI開発を推進し、AI技術ブランド「REiLI」のもと、医療におけるAI技術の活用の幅を広げることで医療現場のワークフロー支援に取り組んできた。今後もさらなる業務効率化支援を目指し、医療データとAI技術を組み合わせた製品開発に取り組んでいく。

診療文書管理・診療業務支援ソリューション「Yahgee」について
診療文書管理・診療業務支援ソリューション「Yahgee」は、文書作成プラットフォームとして診療文書の作成を支援するシステム。現在、国内の300以上の医療施設に導入されている。「退院サマリ」や手術記録などをデータベース化し、情報を相互リンクさせて効率的に管理することが可能である。また、多彩なアシスト機能により入力の手間やミスを削減し、部門を超えたスタッフ間での情報共有と連携を強化。医療現場の作業負荷を軽減し、チーム医療を支援する。

■研究についての問い合わせ=
富士フイルム メディカルシステム事業部
TEL:03-6271-3561

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