富士フイルム/正確な診断が難しい間質性肺疾患の診断をAI技術によって支援 「間質性肺疾患解析ソフトウェア」新発売(25.7.2)
富士フイルム(本社:東京都港区)は、胸部CT画像から、異常所見が疑われる領域を性状ごとに分類し、それぞれの大きさを算出することで、間質性肺疾患の診断を支援する「間質性肺疾患解析ソフトウェア」を2025年7月3日より発売する。同社は、本ソフトウェアを3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT(シナプス ヴィンセント)」で間質性肺疾患が疑われる領域の解析結果を参照できるアプリケーションとして、富士フイルムメディカル(本社:東京都港区)を通じて提供する。
なお、本ソフトウェアは、AI技術を活用して開発した、間質性肺疾患に関連する異常所見が疑われる領域をCT画像から自動で性状分類しそれぞれの大きさを算出する医療機器として日本で初めて承認された。
肺は吸い込んだ酸素と体内の二酸化炭素の交換を行う肺胞と、それを支える組織(間質)が無数に敷き詰められた構造を持っている。この肺胞の壁や間質に炎症や損傷が生じ、肺胞の壁が厚く硬くなる(線維化する)疾患の総称が間質性肺疾患である。間質性肺疾患による日本での死亡者数は年間2万人を超え、呼吸器疾患の中で肺炎・肺がんに次いで死亡者数が多い疾患である。間質性肺疾患には、関節リウマチのような膠原病を伴うものから、原因が特定できない特発性の疾患まで多数の疾患があり、特発性肺線維症という非常に予後の悪い指定難病も含まれている。さらに、間質性肺疾患には呼吸不全や肺高血圧症など重篤な合併症を引き起こすリスクがあることから、間質性肺疾患を早期に発見・診断し、適切な治療を行うことが重要である。
しかし、間質性肺疾患は症状が肺炎など他の呼吸器疾患と類似しているうえ、CT画像上の複雑で多岐にわたる異常所見の広がりやパターンを確認する必要があるため、間質性肺疾患の種類を正確に診断することは非常に難しいといわれている。そのため、間質性肺疾患に知見のある複数の専門医が協議をして診断するケースもある。同社は、これらの課題にアプローチするため、京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学と共同で間質性肺疾患の性状を分類し大きさを算出する技術を2019年に開発し、実用化に向けて有効性の検証を行ってきた。
今回発売する「間質性肺疾患解析ソフトウェア」は、間質性肺疾患の診断を支援するソフトウェアである。胸部CT画像から肺の解剖学的構造(肺野*10、血管、気管支)を識別したうえで、画像特徴パターンに基づいて性状(正常、すりガラス影、網状影、コンソリデーション、蜂巣肺、透過性亢進肺)を自動で分類し、同時にそれぞれの大きさや割合を自動的に算出する。また、異常所見の分布を詳細に確認できるよう、肺野を肺葉ごとに分割し、各領域における異常所見の大きさや割合を表示する。さらに、同一患者の過去の検査画像と現在の検査画像を並べて、性状別や領域別のデータを切り替えながらグラフ表示することで、進行状態を確認できる機能も備えている。これらの機能により、間質性肺疾患の種類を特定するうえで重要な性状の識別や、疾患の進行状況の直感的な把握をサポートする。
また、近年、特発性肺線維症など進行性線維化を伴う間質性肺疾患に対して、線維化のスピードを抑える抗線維化薬が使用されている。病変の大きさが抗線維化薬を投与する判断の基準となっている疾患もあることから、本ソフトウェアの計測結果が投薬判断のサポートになることも期待される。
富士フイルムは、AI技術ブランド「REiLI」のもと、医療画像の診断支援、医療現場のワークフロー支援、そして医療機器の保守サービスに活用できるAI技術の開発を進めるとともに、医療機関にとって最適な提供方法・利用環境を実現することで、検査の効率化と医療の質の向上、人々の健康維持増進に貢献していく。
■主な特長
(1)間質性肺疾患に関連する異常所見が疑われる領域を性状ごとに自動で分類し体積・面積を算出
胸部CT画像から肺の解剖学的構造(肺野、血管、気管支)を識別し、画像特徴パターンに基づいて性状(正常、すりガラス影、網状影、コンソリデーション、蜂巣肺、透過性亢進肺)を自動で分類。さらにそれぞれの体積・面積や全体における割合を自動的に算出する。
(2)間質性肺疾患に関連する異常所見が疑われる領域の分布と進行状態の可視化
異常所見が疑われる領域の分布と進行状態を詳細に確認できるよう、領域ごとに体積・面積および割合を表示し、経時的な変化をグラフ化する。
・AおよびBでは、CT画像のアキシャル像(体を横に切った像)、サジタル像(体を縦に切った像)、コロナル像(体を前後に切った像)および3D画像を表示し、経時的な変化を視認、比較することができる。
・CおよびDでは、現在の検査画像と過去の検査画像を比較することで、正常肺の体積が左右肺ともに減少していることや、どの領域で減少が起きているのかを確認できる。また、グラフは病変の性状別や領域別のグラフに切り替えることができる。
3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT」について
「SYNAPSE VINCENT」は富士フイルムの画像認識技術を生かして、CTやMRIなどの断層画像から高精度な3D画像を描出し解析する3D画像解析システムである。AI技術を活用して開発した各種解析機能を搭載しており、医療機関で画像診断や手術シミュレーションなどに広く活用されている。
■問い合わせ=富士フイルムメディカル 営業本部 マーケティング部
TEL:03-6419-8033