JAHIS&IHE-J/医療情報交換のための規格実装検証事業を報告

 保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)と日本IHE協会(IHE-J)は、厚生労働省による平成25年度「医療機関間で医療情報を交換するための規格等作成に関する請負業務」を実施してきた。同請負業務においてIHE-JとJAHISはそれぞれ、地域医療連携に関する規格と実装ガイドを策定し、それらに基づいて実装したシステムを用いた実装検証(FRH13プロジェクト)を実施。4月1日にその実施内容の報告会を静岡県立総合病院で行った。
 日本国内では、すでに150を超える地域医療情報連携システムが稼働しているが、医療連携を行うための標準化が十分とは言えない状況にある。厚生労働省は地域内・各地域間で相互に情報連携するための標準規格策定のため、同事業を企画したという背景がある。地域医療連携構築の際に必要な規格である「XDS.b」「XDS-I.b」「XCA」「ATNA」等を「地域医療連携における情報連携基盤技術仕様」としてIHE-Jが策定し、この規格をベースに地域医療連携システム構築のための実装ガイドとして、JAHIS技術文書「IHE-ITIを用いた医療情報連携基盤実装ガイド本編」が策定された。
 これらの規格や実装ガイドに関する実験的な運用事業として行われたのが、実装検証「FRH13プロジェクト」である。同実装検証では、静岡県立総合病院と近隣3診療所、3薬局を結ぶ地域医療連携システムを構築。1月中旬より1ヵ月半にわたり、同意を得た患者の診療情報を用いてシステムの検証作業を実施した。患者数は18名、248件の診療情報を連携した。
 今回構築したシステムのポイントは、同意を得た患者のレセコンの処方情報、調剤情報を1ヵ所に収集、閲覧できるようにしたことである。具体的には、連携用コンピュータを経由してデータセンターにレセコンが持つ処方情報・調剤情報をHL7に変換して保存。病院や診療所のドクターがそれぞれ処方・調剤に関する情報が参照可能になるというもの。
 今回の検証について日本IHE協会の奥田保男氏(放医研)は「診療所から出力された診療情報を病院や調剤薬局が、調剤薬局から出力された調剤情報を病院や診療所が閲覧できる。また、電子カルテではなく、レセコンから診療情報を出力し、地域医療連携に活用することが確認された」と述べ、さらに災害時モードを実装することで、自施設に受診歴がない患者の情報も閲覧可能になると、今回の検証の意義を説明した。
 また、実証事業に参加した静岡県立総合病院副院長の森 典子氏は「医師が処方した薬がジェネリックに変更されていたり、患者が薬局を訪れずに調剤されていないというようなデータが確認できることはこれまでになかったこと」と今回のシステムを高く評価した。
 日本IHE協会副理事長の木村通男氏(浜松医大)は報告会見の中で「今回の事業では、国内で広く普及しているレセ電算を利用してどれだけ多くの診療情報を診療所から得られるかを検証した。日本全国に、電子カルテをベースとした高度な地域医療連携システムを普及させるには多額の費用がかかる。今回の標準化システムを活用すれば、包括診療連携料に対応するための全調剤情報を収集することなどにも役立つだろう」と述べた。
 策定した規格や実装ガイドについては、今後行政等が実施する地域医療連携に関する実証事業などで採用される予定である。


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